有休とって裁判所にいってきた。

ふと思い立って、裁判所で裁判を傍聴してきた。裁判を傍聴する為に有休をとったのか、有休をたまたまとったから裁判を見に行ったのか、どっちか先かもう判らないが、とりあえず、自転車に乗って大阪地裁に行ってきたのである。
有名な裁判や話題性のあるものは傍聴人が多いから事前に整理券が配られる、というのを本で読んだので、前日、ホームページをチェックする。おお、殺人があるぞい、是非これは並んで見てみなくては、と思ったんだが、案の定、今朝、寝坊。10時から開廷するはずだったのに、10時半くらいに裁判所に到着(若干迷った)。初めての裁判所なので、かなり挙動不審気味に、うろうろきょろきょろ。本日の予定表がどこかに置いてあるはず。まずはそれを見て、スケジュールを立てなければいけない。案内人みたいな人がいたので、その場所を教えてもらう。入り口付近の長テーブルに無造作に置かれている紙の束に、本日の公判が載っていた。覚醒剤所持、業務上横領、公然わいせつ、窃盗、暴行、とテンションの上がる言葉のオンパレード。記憶の底から、先日読んだ裁判本を思い出す。気をつけなければいけないのが、その裁判が初回か審理中か判決なのか、だった気がする、難しい事件の審理中のものは初回を聞いていないと内容が判らない可能性があるらしい。と、まあ、いわれても、やっぱり最初はいろいろ当たって砕けて見ないと……。初心者の僕は、かなり迷いながら、スケジュールを組み立てる。以下、僕が組み立てた本日のスケジュール。

  • 10:40〜11:10(初回) 覚醒剤所持
  • 11:10〜12:00(初回) 業務上横領
  • 13:10〜13:20(判決) 出入国管理及び難民認定法違反
  • 13:20〜14:00(審理) 詐欺
  • 14:00〜14:40(審理) わいせつ図画販売目的所持
  • 14:40〜15:20(初回) 暴行
  • 15:20〜16:00(初回) 窃盗

くう。寝坊さえしなければ、殺人の裁判が見れたものを……。悔やんでも仕方ないし、しかも、もう、最初の裁判まで時間がなかったので、急いで裁判が行われている部屋に向かう。入り口まで来るものの、どうも入りづらい。入退室は自由と書いてあるが、なんとも、重い空間だ。一瞬、躊躇するものの、思い切ってドアを開けて、中に入る。おお、もう始まっている。被告は、坊主頭で色白、ちょっとキョドっていて、偏見でがちがちで申し訳ないのだが、いかにも、って感じ。僕が入った時、丁度、検察側が被告の履歴などを喋っていた。曰く、中卒でアルバイトを転々とし、今は風俗店店長とかやっていて、そんでもって覚醒剤とか所持しちゃってて、それの売買をしていた最中、御用、だとか。なんだかテレビで見るベタな設定だなぁ、なんて思っていたら、あっという間に裁判が終わる。被告も弁護士も何も反論せず、罪を認めて、さらに次の機会に何かを話すとかなんだとか。え、え、え、って言っている間に被告が縄に繋がれて、外に連れ出されて、終わってしまった。まだ、10:50である。10分しか立っていない。ううむなんだか解らない内に終わってしまった。しかもあっけなく。幸先が悪い感じだ。
僕の次のスケジュールまで20分も開いてしまったので、適当に、隣でやっている裁判を見ることにした。お題は「器物損害・大阪府安全なまちつくり条例違反・威力業務妨害」。今度の被告も先ほどの人と似たような風貌。しいて言うなら、さっきより若い。舌がベロンと出ているローリングストーンズのTシャツを着ていた……なぜこの場でそんなロックな服装なのだろうか。で、被告は、ゲーセンやキャバクラなどで遊びまわっているうちにお金がなくなり、カツアゲでもしようと思って、一旦家に帰って武器になるであろうゴルフのアイアンを持ちだし、それを手に深夜の街を徘徊していたらしい。で、職務質問にあい、御用。話を聞いていると、そのうろうろしている最中に車とかを破壊していただとか。ううむ、短絡的な犯行だ。特に話が進展しないまま、これもまた次回に持ち越しって形で終わる。
丁度いい具合に次の裁判へと移動。次は、業務上横領だ。横領は知能犯だから、一体どんな手口でッ……とワクテカしながら聞いていると、なんのことはない、お客さんから修理すると言って預かった商品を質屋に入れていただけであった(しかも返さず、裁判沙汰)。だが、意外なことに、証人の登場や弁護士の話で、この事件は色を持ち始める。会社を経営していたものの、上手くいかず、消費者金融から借金とかしてなんとか回していたのだが、それでも自転車操業に無理が生じてきて、お客の商品を質屋に出しては入れての繰り返しをするが、その回転にも無理が出てきて……結果、パンク。そんな話。ここで、内縁の妻が証人として登場。質屋に入れた商品は、妻の知り合いのとある会社の社長さんにお金を貸してもらい、全部お客に返したとのこと。夫は真面目であることを主張。そして、自分も一生夫を支えると宣言。一見、臭い芝居にも見えないこともないのだが、憔悴しきった旦那とその旦那をなんとかしようと思っている薄幸そうな妻のコントラストが涙を誘う。弁護士の質問の方法も上手い。罪は認めるけど、情状酌量よろしくね、って狙いが初めて見学する僕にも分かるくらいなんだが、話を聞いていると、いい夫でも魔が差してもおかしくないよなぁ、という気分になるから不思議である。が、それに対する検察のおばちゃんのつっこみがするどい。なぜ内縁なのか、支えるほどの給料はもらっているのか、その社長さんには具体的にどうやって返金すのか、などなど。最後も、被告は自己中心的で被害者に対して精神的にも甚大な被害を与え、卑劣な犯行である!と言い切っている。対する弁護士側は、前科もなく、真面目で、経営が行き詰まり、つい魔が差しただけなので、執行猶予をお願いします、という具合。ふうむ。本日始めて、検察と弁護士のやり取り&人間ドラマが見られた。
昼だ。お昼ごはんを食べなければ、と一旦外に出たのだが、もしかしたら食堂とかあるかもしれないと思い返し、踵も返す。ビンゴ。地下に「食堂オアシス」なるものを発見。外に出ているメニューを見るんだが、安い、下は220円のうどんから上は750円のお食事セット。雰囲気も大学の食堂みたいだ。麺コーナー、丼コーナー、惣菜コーナー、日替わりコーナー。僕はCセットのサケ・ネギトロ丼セットを頼む。ちょっとセレブな650円なり。周りを見渡すと、被告の隣にがっしりと固める役目の警備員だらけ。あと、裁判所職員とか、弁護士っぽい人とか。ふむ。それにしても、ボリュームたっぷりだ。そばとか嬉しいけど、いらないくらい。うちの会社に食堂がないのは有罪ものだなぁ、なんて考えながら本日の出来事を整理する。ただ、思った以上に内容が濃かったりするので、これはメモが必要だと思い、食堂付近の文房具屋でペンを購入。地図の裏に本日の出来事をおさらい。次は、13時からなので、しばらく時間があり、ぶらぶらと館内を歩く。そういえば、地裁しか見てなかったから、高裁も見てみようと、高裁エリアもぶらぶら。う……高裁の本日の予定表に「営利誘拐・人身売買」とかいう項目があるじゃないか。なんて物騒な。これは見ておかなければいけない。スケジュール、急遽、変更である。「営利誘拐・人身売買」は14:30〜15:00である。地裁の「暴行」をやめ、「わいせつ図画」を早めに切り上げれば行ける。階の移動を速やかにしなければ。
そんなこんなで、うろうろしていたらあっという間に13時。「出入国管理及び難民認定法違反」である。これを選んだのは、なんとなくレアそうだったからというものと被告の名前が余りにも長かったからという、しょうもない理由から。しかも判決だけだから10分。開廷前、部屋の外にやけに綺麗な外人のお姉さんがいて、もしかしてこの人もまた内縁の妻だとか、証人だったりするんだろうか、と妄想をめぐらしていたのだけど、見事裏切られる。通訳だった。美人通訳。で、被告はやはり(?)タンザニアだった。内容は不法滞在。執行猶予がついた。こうやって、生で判決を聞くと、リアルな何かを感じる。執行猶予でよかったなぁタンザニアの方や、という気持ちになる。
続いて、詐欺事件。ううむ。これはやはり先日読んだ本の通り、おおまかな事情を知っていないと、さっぱり判らなかった。とりあえず、被告の長男が証人として現れ、僕も頑張って働きます(現在フリーター)とよくわからんことを言っていた。保険関係の詐欺だってことしか判らなかった。
さて、次が待ちに待った「わいせつ図画販売所持」事件。エロ系ってどうしても人間のドロドロしたものが見えるから面白い。これも審理中のものだったから先ほどの詐欺同様、内容がつかめなかったらどうしようと思っていたのだが、案外、これは簡単に概要がつかめた。曰く、被告は児童ポルノを売っていたとか。検察が「〜〜が児童ポルノと明らかにした証拠です」と証拠の写真を提示しているらしいのだが、その資料が見れるのは裁判官であって、僕ら傍聴人はそういったものがあるのだな、としかわからず、次々と読み上げられていく資料の数々に、一体どんなものが証拠として挙げられているんだよ、と身もだえするのみ(いや、児童ポルノが見たいというわけじゃないのですよ)。被告のおっさん、うっすらとハゲていて、目が細く、たるんだ体をしている、いかにもエロビデオ屋の店長風情。ちなみに売っていたのは「関西援交」というシリーズものらしい。おっさんがしていたのは、コピー品を作って売っていただとか。そしてここでも弁護士、おっさんには年老いた母親がいて、おっさんしか面倒が見切れない、なんとか罪を軽くしてくれ、と同情攻撃。なんか、こればっかりだ。「営利誘拐」の時間が迫っていたのだが、なんとなく終わりそうな雰囲気だったので、結局最後まで見ることに。
急いで、高等裁判の部屋に移動。高等は椅子のレベルが違った。地方よりもぜんぜん座り心地がいい。そして、裁判は、もう時既に遅し。被告の家族の話モードに入っていて、事件の概要すら分らなかった。入って家族の話を聞いて、5分で終わってしまうし。だから、再び、急いで前の「暴行」の事件に舞い戻るのだが、これも肝心なところを逃したようで、若者がケンカしたってことしか判らなかった。ご家族一同と彼女らしい女の子が来ていてメソメソと泣いていた。そもそもが野次馬だから仕方ないのだが、慌てて急いで法廷に入ってきた僕は、とっても場違いな人でした。
この二回の往復でなんだか体力を使い切ってしまって、しかも、次の公判まで時間が余ってしまい、なおかつ、時間を埋めれそうなものも見つからなかったので、本日はこれで終了、とメモ用紙をポケットにしまって、帰途。初めての裁判はこんな感じでした。傍聴人というのは意外にもいるもので、主婦の団体とかけっこう見た。六法抱えた学生とかも見た。高裁の方ではマニアっぽい人もいたし。
ふう、あと、見なければいけないのは、殺人と……やはり、公然わいせつか。さぁ、次行けるのはいつになるだろうか。。