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シャンタラムを読んだ

8月からかけてちまちまと読んでいた『シャンタラム』(上)(中)(下)をなんとか読了。

最初は、スゴ本さんの感想(リンク)を読んで、次に橘玲リンク)も薦めていたので、珍しく古本ではなく新刊本で購入した。

結論から言うと、得るものが多かった記憶に残る小説であった。インドから向こうの中東の思想というか、人生観がとても新鮮。

物語そのものも実話をベースにしているというので、あちらこちらへ展開する物語も妙に納得してしまうし、ぶれてはいないんだけど、主人公の考え方や立ち振舞がその場その場で変わるのも人間臭くて良い。

作者はこれを書かなければいけなかったに違いない、と思わせるくらいに、長い長い本であるというのに、どこを部分を読んでも訴えかけるものがある。この大作を二度も刑務所で破り捨てられたにも関わらず、何度も書くという執念が凄い。いろんな意味で分厚い本だ。

あちこち、本の耳を追って読み返した部分がある。一部を以下に抜粋。(登場人物の一人である、カーデル・ハーンの言葉が多いな…。)

「〜〜ぼくは政治がそもそも大嫌いだけど、政治家はもっと嫌いだ。やつらは人間の欲を宗教に変える。それは許しがたいことだよ。人とその人の欲との関係は真に個人的なものだと思わないか?〜〜〜」p109(上)

「善い人間も悪い人間もいない。それが真実だ」と彼は言った。「善と悪は人のおこないの中にあるものだ。善いおこないと悪いおこないがあるだけのことだ。人はただたの人だ――人がどんなおこないをするか、あるいはどんなおこないをすることを拒むのかが人を善と悪に結びつけるのだよ」p402(上)

裁きというものは公正であると同時に寛大でなければならないからだ。裁きは誰もが納得するまでくだされない。たとえ我々みんなが腹を立てている相手を処罰するときでも。我々がこのふたりの若者に科した罰もそうした考えに基づくものだ。この決定は彼らがおこなった悪しき行為を罰するだけではない。同時にふたりを救うためのものでもある。」p463(上)

「古いことわざだ――“王を敵にしてはならない。友にはよけいにしてはならない。家族にするなどもってのほかだ”」p42(中)

「赦し(ゆるし)がなければ、われわ人類は、際限のない報復を繰り返した挙句、とっくに絶滅しているだろう。赦しがなければ、人類に歴史はない。赦しという希望がなければ、芸術もまた存在しない。なぜなら、芸術作品とはある意味で赦しの行為だからだ。赦しという夢がなければ、愛もまた存在しない。なぜなら愛とはある意味で赦しを約束するということだからだ。私たちが生き続けているのは、愛することができるからであり、私たちが愛するのは赦すことができるからだ」p50(中)

「世界中どこへ行っても、どんな社会であっても、正義の問題となると、扱い方はいつも同じだ」マフィアのドンであり、私の父親がわりでもある人物、アブデル・カーデル・ハーンは私に言った。「法律も捜査も起訴も刑罰も、犯罪の中にどれだけの罪悪があるかということよりも、罪悪の中にどれだけの犯罪性があるかということに重点が置かれる」〜〜略〜〜「その逆こそが真実だ。何より重要なのは、その犯罪の中にどれだけ罪悪が存在するかということだ。さっき君は訊いたね。われわれはどうして他のマフィアのように売春やドラッグで儲けないのか。それはそうした犯罪には罪悪があるからだ」p250(中)

「あらゆる崇高なおこないは暗い秘密から生まれるものだ」p431(中)

「狂信的な行為は愛の対極にあるものだ。ある賢者――ちなみに彼はイスラム教徒だ――に言われたことがある。自分は自分と同じ宗教の狂信者よりも理性的で道理をわきまえたユダヤ教徒のほうに、より多くの共通点を見出す。」p541(中)

「人格や個性というのは、ある意味、交わる人との関係によって描かれた地図上の座標みたいなものだ。私たちは愛する人々自信や彼らを愛する理由によって、自分が何者なのかを知り、自分自身を定義する」p564(中)

「ときには正しい理由からまちがったことをしなければならないこともある。大事なのは、その理由が正しいものであると確信し、自分はまちがったことをしていると認めることだ――自分に嘘をつかず、自分がしていることは正しいことだと自分を納得させなければならない」p102(下)

「あらゆるドアは空間だけでなく、時間に通じる入り口だ。部屋に出入りできるドアを通って、人はその部屋の過去と、刻々と姿を表わす未来にも足を踏み入れることになる。」p268(下)

「彼女は“高潔”と“善”を混同している。“善”は“何をおこなうか”によって決まり、“高潔さ”は“いかにおこなうか”によって決まる。高潔なやりかたで戦争をすることもできれば――ジュネーブ条約はまさにそのためのものだ――高潔さのかけらもないやり方で平和をもたらすこともできる。突き詰めて言えば、高潔さとは謙虚さのひとつであり、ギャングも、警察や政治家や兵士や聖人同様、謙虚さを失っては成功は望めない。」p340

シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)

シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)


シャンタラム〈中〉 (新潮文庫)

シャンタラム〈中〉 (新潮文庫)


シャンタラム〈下〉 (新潮文庫)

シャンタラム〈下〉 (新潮文庫)